夢枕獏公式Blog「酔魚亭」

山と渓谷

ヒマラヤのドンキホーテ

『山と渓谷』3月号で、夢枕獏が根深誠さんの著書『ヒマラヤのドンキホーテ』を紹介しています。


『ヒマラヤのドンキホーテ』
2010年10月中央公論新社刊
ネパールにホテル・エベレスト・ビューを建てた日本人=宮原巍の姿を描いた評伝。

山と渓谷 3月号


山と渓谷 2011年3月号 通巻911号
発行日:2011年3月1日
発行所:山と渓谷社
定価:1000円(本体952円)

『言葉ふる森』へと歩いてみる

音楽を聴くという行為は、森を歩くようなものである。
その音楽がいい音楽であればあるほど、その森は深く豊穣で美しい。
ジャズやクラッシックにはその森が存在する。

ポップスやロックは、それとは少し違う平原で動いている。
その音を聴いた時に抱いていた思い出のようなもの、それが体にガラス板のように焼き付いていてなかなか剥がれない。
いわゆるサビの部分で心が止まってしまう。
サビに酔って平原を彷徨う自分がいるのだ。

サビ以外の部分を楽しむ音楽。

音楽の深い楽しみを心の奥底で何度も何度も掘り続けることができる音楽。
それがクラッシックとジャズのおもしろいところだと思う。


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コペンハーゲンにて、図書館の窓。


山と渓谷社から『言葉ふる森』という本が出ました。
作家29人による「山」のエッセイ紀行30編。
山がテーマなので、山への憧憬が深い作家の文章が揃っています。ということは、自然に私の好きな文章、作家ばかりが揃う訳です。
山はおもしろいです。
日本の山はたいがい「下はボーボー、上はつるつる」なので、山に登るときは森を歩くことから始まります。
森を歩く。
景色もあまり楽しめず単純で、山登りにはつまらないと言えばつまらない行程です。
でも頂上を極めるためには必要不可欠な行程です。

このエッセイ紀行集に収められた文章は、『山と渓谷』誌の依頼による作家の原稿集です。
各々の作家がその依頼にどう応えて山への想いを綴ったのか、その視点に立って読んでみるのもなかなかおもしろいものです。

その『言葉ふる森』の中に獏先生の文章も入っています。
たくさんの素晴らしい山の文章の中で、私が一番好きだったのは、やはりこの獏先生の文章でしょうか。(よいしょですか?これ)
獏先生の文章。それは、「ヒューーー、ポタラ」。
なんじゃ、それは。
獏先生ってやっぱりこっち系ですか?
この、一度ツボにはまったらトコトンお腹の皮がよじれてしまいそうになるくらい可笑しな文章と少しせつない内容は単純にして名文、お年を召されてきた獏先生ならではの一篇。
『言葉ふる森』山と渓谷社刊、1500円。どこにでも持って歩けるくらいの軽さの本ですが、その中には29人の作家の、山に対する30のエッセンスがぎっしり詰まっています。



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 『言葉ふる森』山と渓谷社

サビ以外の部分、それは小説にもあります。
ダレ場と言われる部分です。
でも、そのダレ場をどうやって凌ぐか、それが作家としての大きな課題にもなって来るそうです。
「面白くてワクワクする仕事」の外にあるもの。
ライターにも、そしてジャズの演奏家にもそれはあります。
仕事としてやって行く時に、避けては通れない、あまりおもしろくない道です。

そのサビ以外の部分。
本を読み解く本当のおもしろさも。
音楽を聴く本当のおもしろさも。
意外にもそこにあったりするのです。


ダレ場・・・ 演劇や講談などで客が飽きてしまうような場面のこと。


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 物語の多い伊吹山はなぜか大好きな山、
  新幹線に乗るといつも窓にぴったり張り付いてこの山を見ている私
   まるで子供状態。 
    もし私がおばあちゃんになって孫と新幹線に乗った時、
     孫を押しのけて見るのだろうか。 

山と渓谷3月号

「山と渓谷」2009年3月号に夢枕獏がエッセイを寄稿しています。
3月号の特集は「プロが教える山のウラ技99」。
第2特集が「遭難防止カルテ」、山屋の拘りが満載です。

山と渓谷3月号
プロフィール

夢枕 獏

作家、1951年1月1日、神奈川県生まれ。 東海大学文学部日本文学科卒。
1977年に作家デビュー。 以後、『キマイラ』『サイコダイバー』『闇狩り師』『餓狼伝』『大帝の剣』『陰陽師』などのシリーズ作品を発表。 1989年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。2011年『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞。同作で2012年に吉川英治文学賞を受賞。
漫画化された作品では、『陰陽師』(漫画 岡野玲子)が第5回手塚治虫文化賞、『神々の山嶺』(漫画 谷口ジロー)が2001年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をそれぞれ受賞。 映画化された作品に『陰陽師』『陰陽師2』(東宝)、『大帝の剣』(東映)などがある。

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