夢枕獏公式Blog「酔魚亭」

SLOW BOAT TO CLOUD・<限定的JAZZ情報 >

「宿神」そして、デンマークのキラ  by yy

03-29-01

「宿神」 キャラ立てのおもしろさ ー 今際の際の台詞 ー
「あなたさまのために、あなたさまに見守られながら、笑みをうかべて死ぬることにござります。あちらは、それほど悪いところではござりませぬと伝えたくて・・・」
『一冊の本』(朝日新聞出版)に連載中の「宿神」(夢枕獏)第48回「同行二人」より

これは西住が死ぬ間際に西行に向かい発した台詞。(何と美しい言葉、私も死ぬ間際にはこう語って死にたい)
あまりに感銘を受けたので「宿神」の作者であるB先生に、今際の際の台詞についての話を伺いました。
(文覚も清盛も「宿神」に登場する人物です)
仮に台詞を考えてみたら、例えばこうなるのだそうです(いずれも西行に対して今際の際に語られる台詞)

1)「あちらは、それほど悪いところではござりませぬと伝えたくて」(西住)
2)「わしは地獄へ行く。おまえはどうせ極楽じゃ。ゆえにまたあの世で会おうなどとは言わぬ」(文覚)
3)「あの世などあろうはずがない。今生の別れじゃ」(清盛)

もしこの世を去る際、あなただったらどの言葉を選びますか?
凄まじくキャラ立てされたこの「3人」対「西行」を中心に物語が編まれていく『宿神』は今年9月に朝日新聞出版から発売開始予定です。

03-29-2

写真にあるイラストは、飯野和好さんによりキャラ立てされた西住です。(朝日新聞出版「一冊の本」より)

上記の文は、もう一つのブログ、ジャズレーベルのブログに思わず書いてしまったものです。
やはり収まる場所へ収まった方が・・と、こちらのブログの管理人である尊大なるブログキーパーのN氏にお願いして掲載させていただきました。
このところのご無沙汰、平にお許しください。「何?そうだったの、ちっとも知らなかったよ」でいいんですが。
facebookを日本でも友人の方が続々と始められ、facebookのフォローも楽しくてあれもこれもと時間が経つばかり。
(もともとでしたが)ますます時代が読めなくなってきました。
レーベル音楽関係のお仕事のほうももう複雑すぎて意味がわかりましぇん。ひところは配信の時代でしたが、今はYouTubeなど無料サイトがますます盛んになりすべてが今混沌低迷状態です。
音楽配信をする側の人間として紆余曲折、そして出した結論は「ついていけないかも」。

03-29-3


そして。
やはりパッケージを丁寧にひとつひとつ作って行くしかないな、と。
というわけで凝りもせずジャズの新しいアルバムを今、作成中。
レーベルCloudが作成したアルバムも今回のアルバムで7枚目になりました。レーベルと共にどこまでもいく(ホントかー)という素晴らしい方もいらっしゃり本当に涙がでるほど嬉しいです。でも今、実際はパッケージ販売は絶望的崖淵。ならばせめて沈没しないように潜航航行でいくしかない。
欲を出さずに地道に作れということですな。

今回も海外で仕入れてきた音源。
普通はこれをプラケースに閉じこめて費用も抑え簡単に作るのですが、それではやはりつまらない。それだったら輸入盤を何の先入観もなく聴くのが一番です。
レーベルの意図は多分もっと違う場所にあって、デザインされたものを作りたい、その一念でミュージシャンとライセンス元を口説くことから始めています。といっても意味がわからないですよね。本当はそんな蘊蓄はどうでもいいこと。

今回日本に初めて紹介されるキラ・スコーフというデンマークの女性歌手。
作成しているのは、キラがビリー・ホリデイを歌ったアルバムです。5月の発売に向け最終段階まできました。
昨夜、彼女の長いインタビューの回答翻訳文が届き、編集し、とある編集部へ納品したところです。
「どんなことに留意してこのアルバムを作ったのですか」という質問にキラが答えた文中、とても印象的な言葉がありました。同じ想いです、私も。

「今の自分に正直でいること。これまで書かれてきた中でも最高のものを歌いたいということ。名曲と肩をならべられるような曲を自分でつくること。これは私の夢の実現だったのです」キラ・スコーフ








Cloudより本日2月22日発売!

夢枕獏が応援するレーベル Cloud より

ハンナ・ボエル+ヤコブ・カールソン・トリオ「ザ・シャイニング・オブ・シングス」が本日2月22日発売!

デンマークを代表する実力派ポップシンガー・ハンナ・ボエルが
レナード・コーエン、ジャニス・イアン、ジョニ・ミッチェルをカバー。

北欧ジャズ新世代ピアニスト・ヤコブ・カールソンと強力タッグを組み、
ゲストにイタリア人ボーカル・マリオ・ビオンディ、
キューバ出身パーカショニスト・エリエール・ラゾを迎えて贈る大人の美しいラブソング集。

2010年12月2011年1月スウェーデン&デンマーク録音

ハンナ・ボエル

- DDCJ-4006 Cloud -
税込価格 \2,625

今年もどうぞJAZZを  by yy

BACK TO THE BASIC
「原点に帰れ」とジャズメンが出すアルバムはどれもおもしろいです。
皆あの頃のJAZZが好きなのだ。
そう。私もあの頃のJAZZが好きなのだ。
あつい熱の塊のあの頃だ。
人によっての「あの頃」は、いろいろあるのだろうけれど。

2012.01.12-1


1963年デンマークコペンハーゲンのカフェモンマルトルでのサヒブ・シバブのライブ。
そのライブを収めたアルバムの名は、サヒブズ・ジャズ・パーティ『Sahib's Jazz Party』(DEBUT)
サヒブ・シバブは1925年ジョージア州生まれ黒人のリード奏者。
このアルバムでは、まだ若かった当時17歳のペデルセン(b)のベースと23歳アレックス・リール(ds)の力強いリズムがうねっています。
ペデルセンは50代の若さで惜しまれ亡くなってしまいましたが、アレックス・リールは今70歳。時々ツアーで日本にもやって来ているバリバリ現役のドラマーです。
このアルバムからは、当時のデンマークの熱いライブハウスの空気がぐいぐいと伝わって来るはず。「4070Blues」の始まりからあなたは心をわしづかみにされるはず。
どんなにECMの音にのめり込んでも、美しい北欧の音に惹かれても、私はこんなJAZZが好きなのだーっ。
私にとってのJAZZはこの音が原点。
この音源の、このライブの頃のコペンハーゲンに脱帽です。
ヨーロッパの片隅のこの街のどこにこんなエネルギーがあったのだろう。
1960~70年代にアメリカから多くのミュージシャンがデンマークに移住したけれど、この街はそのアメリカのジャズを丸ごと呑み込んだのだ。
北欧の中でも独自のハードバップ路線を行く国デンマークの持つ優しさと包容力。クラッシック音楽指向と彼らの音に対する感性。
デンマークのジャズの包容力に惹かれ続けて、自分でレーベルを作りここまで来てしまいました。初めに作ったライブアルバム『Someday.』は自分の中でもこの『Sahib's Jazz Party』に敬意を表したつもりです。

2012.01.12-2


誰が何と言っても、この『Sahib's Jazz Party』の熱さは本当に素晴らしい。
この熱が私の原点です。
こんなに楽しくてこんなに熱い。どこも難しくはない音楽。蘊蓄なんか何もいらない。
この『Jazz Party』LP盤を実は知り合いのデンマーク人も探していたそうで、来日中に行った銀座の山野楽器で、セール中の中古レコードの中に偶然に見つけて本当に喜んでいました。そのデンマーク人とはデンマーク某レコードレーベルのプロデューサー。
えーっ、デンマークジャズ人のあなたも持っていないデンマーク盤が日本にあったの?
実は日本はかなりのマニア市場で、けっこうな掘り出し物があるそうです。
私はその方面は全く詳しくないので「へええ」と聞くのみ。
ちなみにJAZZPERSPECTIVE(ディスクユニオンが出している季刊誌)に掲載されたディスクユニオンのバイヤーの廃盤座談会を見てみてください。すごいです。
全く意味がわかりましぇん!

JAZZの仕事を始めたばかりの私は「原点に帰れ」どころではなく今だけで精一杯。
ですが、今年は新年から『SAHIB'S JAZZ PARTY』を大音量でこっそり(矛盾するかも)聴いていました。
いつもこの原点を忘れないようにしなければ。
大好きな原点。

こんな私です。今年もどうぞよろしくお願いします。

2012.01.12-3



12月を行く船 by yy

2011_12.19-1

水銀柱は下がり
僕はベッドから起き上がる
気を取り戻して頭を上げなければ
彼女は去ってしまったようだ
どうやら僕はここから立ち去れないでいて
風の中の冬の猟犬たちの吠え聲をずっと聞いている
一日中歩き続ける
コートの襟を立て連れ合いを探す
涙を乾かさなくては
彼女は去ってしまったようだ
あまりにも早く僕を置いて
僕は12月のように暗く
月の男のように冷たい

Sting ”The Hounds Of Winter” より

2011_12.19-2

 早朝の琵琶湖、竹生島と一艘の舟

彦根での舟橋聖一賞受賞式、角川書店紀伊國屋でのイベント、SWAの解散落語会、息つく間もなく始まった12月があっというまに過ぎて行こうとしています。
年賀状も印刷が終わったのにまだ何も手を付けることもできません。
でも、いったいどれほど忙しいというのか。

7日にはCloudの新譜『FRACTAL』が発売。アシモフの小説からインスピレーションを得たという北欧のバンドPeople Are Machinesの新譜です。
実は、私はこの中で文字の大変な打ち間違いをしてしまっていました。
関係者の方々、本当に申し訳ありません。
前にも同じような文字の間違いをして、二度と間違いを繰り返さないように校正をきちんと行っているつもりでしたが、思い込みの呪縛から逃れることはできませんでした。
よく考えたら出版社はそこのところさすがにきちんとしています。ああああ。
レーベルではよく起こる間違いだとか。
でもそんなことはなんの言い訳にもなりません。
忙しかったということは何の理由にもなりません。
言い訳はなしです。


今、真夜中の空に浮かんでいるのは船の形をした月。
空に浮かぶ雲の間から月の船がそろりそろりと浮かび上がってくる光景は幻想的です。天空で再生を繰り返す月はほれぼれと本当に美しいなあ。
この月が三日月になる12月22日。
この日を過ぎると、夜は朝へと向かい始めます。
長かった夜はその日を境に少しずつ短くなっていきます。
再生を繰り返す一年のその境目にある日。
アイルランドのニューグレンジの一番奥まで日の光の届く日です。
今年は、12月22日を境に生まれ変わるつもりでがんばろ。
え?待ち過ぎだろって?
そう、今日から、今からがんばるのだ、です。
言い訳はなしなのだ。


2011_12.19-3

 猫も人も冬の灯りに集まる


2009年イギリスのニューキャッスル近くのダラム大聖堂でのライブ。
ダラム大聖堂で初めて行われた宗教行事以外のコンサートだそうです。
スティングが大好きな冬に捧げた、幻想的なアルバム『ウィンターズ・ナイト』を記念しての一夜限りのライブで、雰囲気も演奏も観客も驚く程静かです。
中でもこのライブの「The Hounds Of Winter」は最高。
録音も素晴らしい。
一番の問題である大聖堂の残響音をこれほどうまく処理できるなんて。
各楽器にDPA4099単一指向性マイクを使ったそうですが、これもYouTubeで見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=_nHKPt4DJEw

「The Hounds Of Winter」
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=F1STeIyWih4

慌ただしい12月ですが。
忙しいあなたに、この歌とライブ映像を。
どうぞ素敵な冬をお迎えください。

重く暗い夜の雲  by yy

これは、10月5日にCloudからリリースしたピーター・ローゼンダールのアルバム「クレセント」の中に入っている曲の名前。
デンマークの作曲家カール・ニールセンの曲です。
ピーター・ローゼンダールは、どちらかと言えばジャズというよりクラッシックの色づけをしてこの曲を3分あまりのドラマチックな小品に仕上げています。

「重く暗い夜の雲」は「tunge mørke natteskyer」がデンマーク語の原題。
私たちがクリアだと思っている北欧デンマークの空気ですが、冬、特に11月は重い雲のたれ込める日の多い、一年中で一番淋しい時季なのだそうです。
この時季のデンマークは、まさしくデンマークの画家ハンマースホイの世界。
白と黒とグレーのシンプルな、空気だけがはりつめる世界。
この月はイベントも少なく、心も落ち着いて冬へと向かう支度を始める。
私はなぜかこの月が好きです。

2011_11.17-1

   ボストンの教会で 


北米ボストンへ行ってきました。
来年に出す予定のアルバムレコーディングです。
「どうしてこの忙しい11月に行くのだろうか、私」と自問自答をしながら、気づいたら飛行機に乗っていました〜、という感じです。
10月から11月は予定が山のようにあり、日本を留守にするのに申し訳なく忍びない月でした。
でもミュージシャンは一生懸命にこのレコーディングのために日程を都合して頑張ってくれたので、それならばいかねばならんだろうと責任感で飛行機にいつのまにか乗っていたというわけです。本当は私が行かなくても優秀なミュージシャンとエンジニアはちゃんと仕事をやってくれるのですが。
経費削減で無料航空券と一番の格安チケットで行ったので、乗り継ぎ等でボストンまで24時間もかけて・・。ふー。
AAの機内で出されたコーヒーのまずかったことだけが変に印象的な長い移動でした。


レコーディングはデンマークでだけだと決めていた私がなぜまたボストンへ・・。
デンマークのコインはハートマークだし、デニッシュ好きだし・・。(関係ないか)
デンマークで録る音が私は一番だと思っています。
ですが、一方「ボストン」という土地にとても興味があり、ここで音を録ってみたいと思い始めたら、いてもたってもいられなくなりました。
ボストンはアメリカの東海岸にある古い街で、アメリカの中でもどことなく英国の香りのする街です。ハーバードがあり、マサチューセッツ工科大学があり、ボストン美術館があり、ボストン交響楽団のある街。
そう思い始めていた私に、まわりの(ミュージシャンです)「ボストンは素晴らしい」攻撃。
「そーか、バークリーもあるしなあ」と、いつのまにかボストンで録音をということになっていました。
ミュージシャンに上手い具合に、単純な私は嵌められてしまったわけです。
もちろん「喜んで」です。

2011_11.17-2

  ボストンの街中、スタバの前のFREEPAPERスタンド 

ボストンは水と海の香りのする、空気のきれいな古い街でした。
昔、英国からメイフラワー号が上陸したのはすぐ近くの町。港から外にでればその水はヨーロッパへとつながっています。
日本からすると北米とヨーロッパは正反対にある場所ですが、二つの文化は海でつながっています。
クラッシックも盛んなこのボストンで、北欧とジャズの聖地アメリカの混じり合ったようなボストンならではのジャズが録れました。ボストンのスタジオもどちらかと言えばクラッシック録音用のスタジオ。NHKにあたるようなテレビ局の中にある素晴らしいスタジオでした。
今回の編成は、アメリカ人とペルー人と日本人という3つの文化からなる不思議なピアノトリオ。
そして、これを日本でアルバムに仕立てるとまたまた不思議な作品に。。。
多分、なっていくでしょう。
リリースは来年ですが、これもCloud的独自詩情秀逸作品になるのは間違いありませんです。はい。


12月には新譜People Are Machinesの『FRACTAL』が出ます。寺田克也さんのジャケット!
これは、まさしく北欧最前線の音。ロックのような力を持つ、若い、くらくらするような硬派ジャズです。
ジャズ雑誌各誌に素晴らしいレビュー掲載されています。


最後に。
デンマーク在住のピアニストの平林牧子さんから教えていただきましたが、
「重く低い夜の雲」は死を目前にした時の曲なのだそうです。
美しい曲です。
デンマークのスタジオ録音のピーター・ローゼンダールのピアノで聴いてみてください。
名手マッズ・ビンディングの弦の音が最後を締める最高のトリオ、最高のエンジニア、最高の音で録れていると思います。
アルバム「クレセント」(三日月という意味)
山野楽器銀座本店、タワーレコード、ディスクユニオン、Amazonでも発売中です。

2011_11.17-3

      ボストンを飛立ったのは朝の6時発の飛行機。
      夜中の2時起きで空港へ。
      東の空に満月が、と思ったら、
      それは西の空に沈もうとする不思議な月でした。


お茶と同情  by yy

2011_10.26-1

新門前の骨董屋で見つけた木彫りの人形。 
   3センチほどの人形の下に
      「昭和9年5月8日有馬温泉にて」と書いてあった。
  
 
もう私はミルクトレインには乗りたくない
9時にはベッドに入り、夜明けと共に起きる
12時半には昼食、5時きっかりに夕食
全盛時代をとうに過ぎた古い友人たちを慰める
過ぎ去ったあの頃
私にお茶と同情をちょうだい
成功するのだと信じていた人たちに乾杯
遊んで過ごす、夜明けまでの長い時間
もう私は詩を書かない
私の恋は終わってしまったから
          ーーーージャニス・イアン

これは、ジャニス・イアンが1975年に発表したアルバム『Between The Lines』に収録されている「Tea And Sympathy」の歌詞の拙訳。

ここに歌われている「ミルクトレイン」って何だろう。
何となく素敵な響きのする言葉。でも変な意味だったらどうしよう・・。
調べると「朝早く牛乳を運ぶ列車」と書いてあった。その風景が頭に浮かぶやいなや、ストーリーがたちまち浮かぶのだけど、それは私の想像の中でのこと。
一旦頭に浮かんだ景色はなかなか頭の中から消えない。
そういう訳で、まっさらな状態の友人に対訳を手伝ってもらい作業しています。

2011_10.26-2

これは「薄荷茶と梱包」


歌詞の対訳は本当に難しいです。(ただでさえ、英文解釈が苦手)
そしてその歌に思い入れがあればあるほど、難しいです。このジャニス・イアンの「お茶と同情」は原題が「Tea And Sympathy」
これを何と訳すかということからつまずく始末です。
何の対訳をしているのかというと、Cloudが次に出すアルバムの中に収める歌詞の訳です。
次に作るアルバムはデンマークの女性ボーカリストのアルバム。
その彼女がカバーした中の一曲が、ジャニス・イアンの「Tea And Sympahty」です。ジャニス・イアンの原曲も素晴らしいけれど、今回のバージョンはバイオリンの弦楽器から始まる、心に染みわたるアレンジ。全体を通して、低く唸るハンス・アンダーセンのベースの音が深く深く心を打ちます(中年にはこの低音が効く)。
これはスウェーデンのエンジニア、ラース・二ルソンの好みなのでしょうか。
私はこの「お茶と同情」をこのアルバムのタイトルにしたかったくらいなのですが、タイトルが「お茶と同情」じゃ売れませんよと言われてしまいました。なるほど。(いちおう売れなくては困る)
ただ今、製作中。
いいアルバムにします。

2011_10.26-3

 スウェーデンから届いた「お茶と同情の音源」に貼ってあった切手。

あなたが音楽という森を歩く時 by yy

2011_10.03-1

「作品世界を成り立たせている要素の一つひとつを読者が自分で発見すべきだと思うからだ。予備知識は少なければ少ないほどよい作品なのである」(柴田元幸)

これは読み終えたばかりの小説の最後に書いてあった解説。
読者の迷いを切り落としたようなこの解説。
これでいいのだ。
小説の内容の「不可解」に惑わされてしまう時、解説という灯りが足下を照らしてくれる。
すぐれた解説は、灯りとなり作品の内容を幾重にも深く照らしてくれるのだ。
音楽という深い森に迷う時、あなたはどんな灯りに出会うのだろうか。


昨日届けられた一枚の葉書に「『Gershwin.』を最近になって聴きました」と書いてあって少し驚きました。
『Gershwin.』はCloudから4月に出したマグナス・ヨルト・トリオのアルバム。今、またこれを聴いてくださっている方がいるのだと思うと本当に感謝感謝です。
『Gershwin.』は思えば3月の大震災の後で全く市場が冷え込む中でのリリースでした。
ウィズストリングスというジャズが果たして日本でどれだけ売れるのだろう。これを売るのは本当に難しい。でももうやるしかない。迷っていた私に大村幸則氏が「解説」という灯りを照らしてくださいました。ウダウダと大きな迷いの中にあった私ですが、この大村さんの解説が大きな灯りとなりました。

そういう理由からだけではないのですが、10月5日に出す『crescent』の解説も大村幸則氏にお願いしました。
ピーター・ローゼンダールという不可解な匂いのするピアニストを解説していただくことはなかなか大変だったのではと思います。
Cloudから出す音楽はやはりどこか変わっている・・また彼のことを「摩訶不思議」と切り込んでメディアに紹介してしまった私もいけないのですが・・。

タワーレコードのイントキシケート誌次号にもピーター・ローゼンダールのインタビュー記事解説が掲載される予定です。
こちらは、タワーレコードの馬場雅之氏解説。

切り込みのなかなか難しいピーター・ローゼンダール。馬場さんの解説もそう来るのかという解説、おもしろくてなかなか魅力的。
(というか、添えられたピーターの写真がまたかなり変わっています。これは私が提供した写真。ああ、どうして私はこんなプロデュースしかできないのだろう・・・と一応自分の変なところを反省しています)
10月中旬にはこのイントキシケート誌はいろいろな場所で配布されます。こちらもぜひどうぞご覧くださいませ。


ピーター・ローゼンダール・トリオ新作『クレセント』日本発リリース
10月5日発売です。銀座山野楽器本店3Fジャズ他、日本全国で発売されます。

2011_10.03-2

 思い切り魅惑の赤を使ったCDレーベル、本当に美しいです。       


2011_10.03-3

 秋、コペンハーゲンのホテルで。
イルムスのサンドイッチを食べながら買ってきたばかりのCDを聴いたりして部屋で過ごしていました・・秋は暗くなるのが早いので用事がない限り部屋に籠ってしまう・・それもかなりホテルの部屋は暗い・・海外のアルバムは解説なしということが多くて、余計な迷いもシンプルにきっぱり切り捨てられるのです。ただひたすら音楽を聴くのみ。

色の迷路へ  by yy

2011_09_21-1

 当たらぬも八卦で今日のあなたの色を見てみる。

ヘアサロン(美容室)でのこと。
ヘアサロンにいるお姉さんやお兄さんは大体が話し上手で、思わず聞きほれてしまうことが多いのです。私がいつも行くヘアサロンのカラーリストは、ミュージシャンで言えばベーシストタイプのもの静かなかっこいい男性だけれど、話が時々とてつもなくおもしろい。いろいろ「若い人情報」を教えてくれる。彼は私のジャズの話を楽しそうに聞いてくれる。そして私の作ったジャズを店内で流してくれたりする。そうして私も気を良くしてそのサロンに通ってしまう。(という図はよくある図です)上手なんだなあ。

ある日私はそのカラーリストの彼にリクエストしました。
「髪を栗色に染めてくださいまし。秋だし、栗色が好きなので」
彼は言う。「そうですね。では栗色にアッシュを足してみましょうか」
「えっ、アッシュって灰ではないですか」
栗に灰?まるで猿蟹合戦ではありませんか、それ。
彼の言うには毛染めにアッシュというカラーがあるそうだ。でも、わたしには灰の色に染めるという感覚がよくわからない。それは固辞して「アッシュ」ではなく「栗+人参」にしてもらう。その方がなんだか健康的。

そのカラーリストが言うには、「栗色はどんな色なのか」と若い子に聞いてみると、「栗色はモンブランの色でしょ」と答えるのだとか。
「えー!そうくるのかー。多分、甘いもの大好きの子の視点かもね。かわいい」と、家に帰ってうちの娘2号に聞いてみました。娘2号はいちおう普通の女子。(そして一応CGデザイナーでもある)
「栗色ってどんな色か知ってる?」
娘は答えました。「黄色のようなクリーム色のような・・・」
私はそこまで聞いて、脳天を雷が直撃したような衝撃を受けました。
「あなたの瞳は栗色だね」と若い子に言ってもそれはもしかして違うふうに受け止められているのかもしれないと分ってから、私は色について発言する時は深く考えるようになってしまいました。


2011_09_21-2

「ばら色」も実のところはよくわからない。


色に対する認識は意外と共通ではなかったりする。それもかなりの確率で。
この衝撃的な事実に、この年になって初めて気がつく始末。

そんなあやふやな爆弾のような事実を抱えて長年生きてきた私ですが、仕事ではそんな曖昧さは許されないと、やはり最近ようやく気づきました。(遅いよ)
私はアルバムのジャケットの色を決める時、デザイナーと私の認識の差から非常に多くの問題がその都度生じていました。
それで色について共通の認識を持つために、私たちは「共通の色見本帳を持とう」ということになりました。そしてこれがまた非常に役に立っています。
その色見本帳は、「DICのカラーガイド」といいます。それで会話をするとこうなります。
例えば、今までは「まるで今落ちて割れたばかりの毬からとびだしてきた栗色」とか、「夕刻に空一面重くたれこめた雲のような灰色」とか言っていたものを「第19版のDIC 341ね」とか「DIC654がいいよ」(なんだか色気ない・・)
ちなみにDICのカラーガイドには、日本の伝統色、中国の伝統色、フランスの伝統色というものもあります。
プロのデザイナーはこの見本帳を色指定に使うのだそうです。色気ないですが便利なものです。(値段が異常に高いですが)


2011_09_21-3

 日本の伝統色に「蒸栗色」という色があった。
         若い人にとっての栗色とは多分これだ。


今度、10月5日に発売予定のCloudの新譜、ピーター・ローゼンダール・トリオの『クレセント』
このレーベル面(CD面)には「DICの199番」に近い色を使いました。この色は黒と組み合わせた時に美しさが増します。
この色はソニーがデザイナーのために出しているレーベル色見本帳で選んだもの。
その色は多分赤なのですが、いろいろなインクが混ざった赤。
DICの日本の伝統色にはその色は見当たらず、西洋の色見本帳で探してみたら、それはTOMATO REDに近い色でした。

10月5日発売の新譜。Peter Rosendal Trio " crescent "
お近くのCDショップ、アマゾン等のネットショップで発売になります!
自分で言うのもなんですが・・デンマークジャズの最高峰のオーディオ。
素晴らしい音源。そしてジャケットは洋服をまとうようにおしゃれなデザインです。
ここに”crescent" YouTubeのリンク先貼っておきますね。音源が少し聴けますので。

http://youtu.be/LJV43BvIg6M

ピアニストもベーシストもドラマーもデンマーク人。
ベーシストはMads Vindingと言って、昔から日本の多くのジャズファンにも愛されてきた64歳の名ベーシストです。大変に穏やかな性格の彼ですが、彼のベースは夜に飛ぶ鳥のように羽ばたいていきます。
そして、デンマーク1のドラマーだと言われるMorten Lundのブラシも本当に素晴らしいです。

猫に目薬   by yy

大蝉時雨音頭が夏の最終楽章へと向かう。
大量発生した庭の黄金虫は、今日道端で、はぐれた一個の全音符になってころがっていた。
静かな、そういう出だしで秋は始まる。
次の章の初めの音符はたぶん今夜鳴き始める虫。
生まれたてのフラットの音符だ。

2011_08_30-1

  寝姿その1

夜、ソファで一緒に(ホントは暑苦しくて一緒に寝たくないのだけれど、無理矢理体を寄せてくる)寝ていた我が家の猫の目から涙がこぼれている。
それも緑色の猫の目に映る透明のきれいな湖。Lacrima Lake猫版だ。
その涙は一体どうしたのだ。
何か悲しいことでもあったの?
いろいろと理由を探る。
でも、彼は黙して理由を語らない。我が猫ながら、その寡黙さカッコ良すぎだろ。

でも、だがしかし。
次の日の朝。
劇的ガビーン状態は突然にやってきた。
我が家の猫の目が開いていない。
完全に目やにでつぶれてしまっていた。片目だけはまだかろうじて開いているのだけど、完全に人相も変わってしまっている。
今までのかわいらしいおボッチャン人相ではなく、ドスの効いたこわいお兄さん人相なのだ。目のまわりの皮膚も赤いし。こんなことは初めて。
先日庭で喧嘩した猫から良くない病気をもらったのか。
これは尋常ではない。
ということで急遽、病院へ連れて行き獣医先生のご判断を仰ぐこととなった。

2011_08_30-2

 寝姿その2、「あられもない」とはこのことだ。 


先生が言うには、「熱もないし何かの感染症だろうけれど今のところ原因は不明です」
とりあえずは目薬をさしてあげて様子をみる、ということになったのです。
そういうわけで2種類の目薬をもらい一日2度の目薬タイムです。
「猫に目薬」の何とも幸せな図です。
私は自分の子供にも目薬をさしてあげた覚えがないというのに。(いえ、もしかして遠い昔にあるのかもしれないけれどそれは記憶のはるかかなた)
手の平におさまる程の小さなものに目薬をさしてあげる、この幸せ感は一体なんなのだ。
すっかり忘れていた母性が目覚めた瞬間です。
(ひいき目にみても)精悍な猫ではないけれど、今はみるカゲもなくて。
はやくよくなってねと願うばかり。

2011_08_30-3

  目薬をさし始めてだいぶよくなりました!
      

三島の鰻でお酒をチビリ  by yy

三島へ出かけてきました。
三島は私の住むところからは峠を越した向こう側にある街。
風の色も光の当たり方もどこかこことは違う場所。
行く前から「旅だ旅だ」とドキドキしていた私でした。
ペットボトルの冷たいお茶を買い込み、のどを潤し「旅行けばー」と勇んで乗り込んだ新幹線。
なのに、旅情に浸る間もなくあれよあれよと新幹線は三島駅へ。
旅どころか、隣の町へお邪魔する感じ。
誰だー!東海道線の鈍行列車を使わなかったのは!
鈍行列車の旅こそが小田原から三島への旅。左に相模湾の海岸線を見ながら一駅一駅を舐めるようにしていく旅こそが、旅の中の旅なのに。
B先生が直前まで必死の原稿書きをなさっていたために、新幹線を使い一番最速で(安易に)三島へ行くという、単なる仕事(のような旅)になってしまいました。

2011_08_25-1

 三島・佐野美術館の庭です。


三島に行ったのは今、佐野美術館で開催中の、イラストレーター飯野和好さんの原画展覧会を見に行くためです。
「ねぎぼうずのあさたろう見参!飯野和好の世界」と名打たれた企画展。
飯野さんの個展の中では、今までで一番大きな展覧会となる今回の原画展覧会です。
佐野美術館の学芸員の方が飯野さんの大ファンで、実現した今回の展覧会です。
その学芸員のNさんには今回お会いできませんでしたが、チラシを読ませていただいただけでもその愛情の深さが伝わってきました。そういうわけでとても楽しみな今回の個展でした。
やはり企画展は面白い。愛の伝わり方が半端ではありませんね。

2011_08_25-2

 会場で手に入れた飯野さんの本。
     画材の選び方など、かなり読みごたえありました。


キャラクターの面白さでも飯野さんの作品は群を抜いています。
ねぎぼうずのあさたろうも好きですが、私は個人的にはふようどのふよこちゃん家族が好き。
腐葉土が主人公だ。一同ダサイぞ、どうだまいったかーっ。という私的には愛すべき最強のキャラクターたちです。

今回の展覧会で一番印象的だったのは、『わんぱくえほん』(1981年偕成社刊)の原画。
これは飯野さんが34歳の時の作品。絵本の原点ヨーロッパのマザーグースなどのファンタジーと出会った後に描かれた絵本。
これは実は飯野さんの絵に私が一番影響を受けていた30年以上前のもの。その頃に描かれた本当に懐かしい作品なのです。
この原画に触れることができて感激でした。
わら半紙に、ボールペン(ゼブラのだとか)、色鉛筆、マーカーで丁寧に描きこまれた作品。道端のナズナさえも愛おしい。
この後、絵本の仕事がそれほど来る訳でもなく飯野さんは近所の子供にメンコなどを作って売っていたそうです。その手作りメンコも展示されていました。メンコ・グリムやメンコ・マザーグースと名付けられた作品群。
私はこの時代に描かれた線の一つ一つがまるで飯野さんの心を表しているようで、食い入るように見てしまいました。
一人の作家の歩いた後。そこにいた時間。
飯野さんとお話すれば飯野さんはもちろん楽しくその時代を語ってくださいますが。
それだけではないですよね。想像して楽しむことができる、原画と向き合うということはそういうことですよね。


飯野和好氏。
ある時にはスーツ姿でブルースハーモニカを吹きブルースを唸り、また次の日には三度笠を抱え股旅姿。
次なる旅は、九州宮崎の木城町にある”えほんの郷”で、「飯野和好の世界展」(9月10日〜11月13日)だそうです。10月8,9日にはすっ飛び籠を作り、ライブも行われるとか。
宮崎県の真ん中にある木城町は、私も大好きな面白いところです。宮崎出身の私としてはその大好きな場所に飯野さんが通ってくださっているだけでも嬉しい。
楽しみです。

2011_08_25-3

 飯野画伯と獏巨匠 
     この二人が出会うと、何やらどうも怪しい。


会場を出て、三島女郎衆の待つ飯盛宿へ、ではなく名物の三島の鰻を食べてきました。
鰻も美味しかったですが、そこで出してもらったお酒のアテのお漬け物盛り合わせ、美味しかったなあ。三島は水のきれいな街で至る所に水が湧き出ています。
その土地の店に入り、その土地の食べ物を食べ、お酒を飲んだだけでなんだかとてもいい旅をしたような気分です。
仕事のような短い旅でしたが楽しい旅でした。



ねぎぼうずのあさたろう見参! 飯野和好の世界
平成23年7月16日(土)〜9月4日(日)
佐野美術館
http://www.sanobi.or.jp/tenrankai/2011/iino.html

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