2010年06月
コペンハーゲンから戻って来ました。
今回は、ゆっくりとレコーディングのために時間をとったので、とても楽な滞在となりました。
お天気も一日だけ台風のような雨風の日がありましたが、後はすこぶるいい感じ。
前回の滞在は秋。
一年の中でも一番憂鬱な月と言われる11月。冬の始まる雲の低いおとろおとろしい日々だったので、今回の季節の明るさは一段と心地よかったです。
それに前回の滞在の時は日本人は私だけでした。回りはすべて外国語をしゃべる人たち。
行ってから帰ってくるまで、一言も日本語をしゃべらないというのはさすがに年寄りの私にはキツかった〜。
仕事でもプライベートでも気を遣いすぎて死にそうになりました。おおげさですか、私。私は意外と真面目なのです。
そうです、お酒を飲む時以外はです。

コペンハーゲンのブックカフェ。
夜にはポール・ヘニングセンの灯りが素晴らしい。
ここの料理は安くて美味しいです。
今回の旅を終え、I氏が、低い空の場所に帰って来ましたね、と成田に着いた時にそう言っていました。
そのとおりなのです。
日本独特の陽の当たり方や空気のせいでそう感じるのです。
空の高さは世界中どこも一緒のはずなのに。
コペンハーゲンから成田まで約10時間、空を飛んでいた訳ですが、この飛行距離の長さは異文化を移動するのにちょうどいい長さの快適な時間かもしれません。
デンマークと日本を移動する飛行機の中で、下に広大なシベリア大陸を見ながら、私はいつも思うのです。
シベリア大陸はほとんど人が住んでいない大地。
でも、その厳しい環境の中で営まれている生活をはるか上空の空から思いながら、シンプルなその生き方についていつも考えてみるのです。
冬は凍土と雪に閉ざされ、夏も緑の少ない大地。
シベリアの人たちは何の生活の糧を得て暮らしているのでしょうか。
何の楽しみを持って暮らしているのでしょうか。
文化はテーブルクロスの皺のようなもの。
人間の根本的な営みがいろいろな波で集まり、寄った皺のようなもの。
私はそのシワのごちゃごちゃとした中のほんのひとつの点でしかありません。
私には皺が必要。心地いいシワが不可欠。
シベリアの大地がシンプルな白い生地だとしたら、私がいる場所は多分、複雑で難解。
でもここが私の場所です。
シワのある場所が私の場所。
一筋縄ではいかない複雑な文化の皺。
あたりまえですが、このシワには、決してアイロンなぞかけてはなりません。

チボリ遊園地の灯り。ノスタルジックです。
デザイナーはポール・ヘニングセンなのでしょうか。
今回のコペンハーゲン滞在にも、私は日本の民俗学者、宮本常一氏の著作を携えて行きました。
まだ地方の色濃い文化の残る昭和の時代に日本中を歩き回った彼の著作。
彼のフィールドワークを大切にする姿勢は、海外にいる私をいつも後押しをしてくれるのです。思想の羽のように。
そして同時に彼の著作は、「重し」のようです。
彼は本の中で、私にいつもいろいろなことを気づかせ教えてくれます。

これもミュージシャンと一緒に行ったチボリで撮った灯り。
夜のチボリは灯りハンティングには最高の場所でした。
今回は、ゆっくりとレコーディングのために時間をとったので、とても楽な滞在となりました。
お天気も一日だけ台風のような雨風の日がありましたが、後はすこぶるいい感じ。
前回の滞在は秋。
一年の中でも一番憂鬱な月と言われる11月。冬の始まる雲の低いおとろおとろしい日々だったので、今回の季節の明るさは一段と心地よかったです。
それに前回の滞在の時は日本人は私だけでした。回りはすべて外国語をしゃべる人たち。
行ってから帰ってくるまで、一言も日本語をしゃべらないというのはさすがに年寄りの私にはキツかった〜。
仕事でもプライベートでも気を遣いすぎて死にそうになりました。おおげさですか、私。私は意外と真面目なのです。
そうです、お酒を飲む時以外はです。

コペンハーゲンのブックカフェ。
夜にはポール・ヘニングセンの灯りが素晴らしい。
ここの料理は安くて美味しいです。
今回の旅を終え、I氏が、低い空の場所に帰って来ましたね、と成田に着いた時にそう言っていました。
そのとおりなのです。
日本独特の陽の当たり方や空気のせいでそう感じるのです。
空の高さは世界中どこも一緒のはずなのに。
コペンハーゲンから成田まで約10時間、空を飛んでいた訳ですが、この飛行距離の長さは異文化を移動するのにちょうどいい長さの快適な時間かもしれません。
デンマークと日本を移動する飛行機の中で、下に広大なシベリア大陸を見ながら、私はいつも思うのです。
シベリア大陸はほとんど人が住んでいない大地。
でも、その厳しい環境の中で営まれている生活をはるか上空の空から思いながら、シンプルなその生き方についていつも考えてみるのです。
冬は凍土と雪に閉ざされ、夏も緑の少ない大地。
シベリアの人たちは何の生活の糧を得て暮らしているのでしょうか。
何の楽しみを持って暮らしているのでしょうか。
文化はテーブルクロスの皺のようなもの。
人間の根本的な営みがいろいろな波で集まり、寄った皺のようなもの。
私はそのシワのごちゃごちゃとした中のほんのひとつの点でしかありません。
私には皺が必要。心地いいシワが不可欠。
シベリアの大地がシンプルな白い生地だとしたら、私がいる場所は多分、複雑で難解。
でもここが私の場所です。
シワのある場所が私の場所。
一筋縄ではいかない複雑な文化の皺。
あたりまえですが、このシワには、決してアイロンなぞかけてはなりません。

チボリ遊園地の灯り。ノスタルジックです。
デザイナーはポール・ヘニングセンなのでしょうか。
今回のコペンハーゲン滞在にも、私は日本の民俗学者、宮本常一氏の著作を携えて行きました。
まだ地方の色濃い文化の残る昭和の時代に日本中を歩き回った彼の著作。
彼のフィールドワークを大切にする姿勢は、海外にいる私をいつも後押しをしてくれるのです。思想の羽のように。
そして同時に彼の著作は、「重し」のようです。
彼は本の中で、私にいつもいろいろなことを気づかせ教えてくれます。

これもミュージシャンと一緒に行ったチボリで撮った灯り。
夜のチボリは灯りハンティングには最高の場所でした。

とうとういよいよコペンハーゲン滞在も明日まで。
優秀なミュージシャンのおかげで、一日もはやくレコーディングを終えてしまいましたので、私の滞在予定は一日ポッカリと空いてしまいました。
この貴重な時間。
何をしようかと考えた挙げ句、やはり大好きな博物館へ行こうということにしました。
デンマークの博物館は入場料は基本的に無料です。
莫大な収蔵品を前に本当に無料でいいのかーというくらいにすごいことなのです。
それに週日はほとんどギャラリーがいません。
貸し切り状態です。
今日も私はほとんど貸し切り状態で博物館を楽しんできました。
が、実はデンマークの博物館には、たくさんのドクロと沢山の遺体(湿原遺体)が置いてあるのです。
コワカッタですだーっ!!!
一人で見て歩いて、やはり誰もいない展示室に遺体と一緒というのはよくないです。
それに怪しい展示室はその演出効果をあげるためか、異常に暗いです!
遺体と一緒でなくとも、やはりおどろおどろしい歴史の遺物と、暗い部屋に一人とりのこされるのはあまりいい気分ではありませぬ。
気づいたら、少し駆け足で、その展示室を後にしている可愛い日本人の私がいました。
でも、そんなこともすべて含めて楽しめましたが。
一人だけの誰もいない博物館は貴重です。
歴史とじっくり向き合えます。
今回、今までに行ったことのない展示室もたくさん見れました。
新しい発見もあり、とても楽しめました。
展示物を見終わって、飲むオレンジジュースの美味しかったこと!
それにサーモンのサンドイッチも最高でした。二つ合わせて90クローネ。
1400円あまり!やはり考えるとデンマークは物価が高いですね。

レコーディングの打ち上げは手作りのディナーとワインでした。
博物館で時間をつぶした後、JAZZCUPで皆と合い、それから体調を崩した若いSのために日本料理を皆で食べに行こうということになりました。
私はプルコギ(これは日本料理ではない)、他の人たちはビビンバ(これもぜったいに日本料理ではない)
韓国料理を出すさくらという名の不思議な日本レストラン。
まあ、そんなファジーなアジア料理をなぜかみなで美味しい美味しいと楽しみ、明日はいよいよ日本に帰還することになりました。
コペンハーゲンのレコーディングも無事終了しました。おかげさまで素晴らしいレコーディングができました。
異国でのレコーディングについてもいろいろまた学びました。
この年になってもまだまだ学ぶことがたくさんです。
人は、いつまでたっても未完成なのです!
だから楽しいのですね。
コペンハーゲンに月は出るのかー。
これを今回確かめたかったのですが、やはり今回の滞在でもとうとう月は見れませんでした。

スタジオから下を見れば、かわいいバイクが一人で待っていた。
以前、夢枕獏事務所が間借りしていた「パズル通信ニコリ」が、めでたく創刊30周年を向かえました。
ニコリ2010年夏号には、〈ニコリ創刊30周年記念 あの連載が、1回だけ帰ってきた!...その2〉として、
夢枕獏「夢喰いエッセイ--あの頃のこと---」が掲載されています。

季刊 パズル通信ニコリ Vol.131
2010年夏号
2010年6月10日発行
定価862円
ニコリ2010年夏号には、〈ニコリ創刊30周年記念 あの連載が、1回だけ帰ってきた!...その2〉として、
夢枕獏「夢喰いエッセイ--あの頃のこと---」が掲載されています。

季刊 パズル通信ニコリ Vol.131
2010年夏号
2010年6月10日発行
定価862円
徳間書店の月刊誌『食楽』に連載中の『夢枕獏の釣魚漫遊「愚か者の杖」--釣り時々食楽--』ですが、
7月号には連載第50回・ヴェネズエラ編」が掲載されています。
文・夢枕獏 写真・佐藤秀明『夢枕獏の釣魚漫遊「愚か者の杖」--釣り時々食楽--』

誌名:『食楽』2010年7月号
夏の家飲みおつまみ帖・日本酒番付
発行所:徳間書店
特別定価:860円(本体819円)
7月号には連載第50回・ヴェネズエラ編」が掲載されています。
文・夢枕獏 写真・佐藤秀明『夢枕獏の釣魚漫遊「愚か者の杖」--釣り時々食楽--』

誌名:『食楽』2010年7月号
夏の家飲みおつまみ帖・日本酒番付
発行所:徳間書店
特別定価:860円(本体819円)
プロフィール
夢枕 獏
作家、1951年1月1日、神奈川県生まれ。 東海大学文学部日本文学科卒。
1977年に作家デビュー。 以後、『キマイラ』『サイコダイバー』『闇狩り師』『餓狼伝』『大帝の剣』『陰陽師』などのシリーズ作品を発表。 1989年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。2011年『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞。同作で2012年に吉川英治文学賞を受賞。
漫画化された作品では、『陰陽師』(漫画 岡野玲子)が第5回手塚治虫文化賞、『神々の山嶺』(漫画 谷口ジロー)が2001年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をそれぞれ受賞。 映画化された作品に『陰陽師』『陰陽師2』(東宝)、『大帝の剣』(東映)などがある。
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Rhapsody

Can't Help It

Lujon

クリスチャン・ヴースト『アーバン・ヒム』

ニコライ・ヘス『エディテッド』

ピー・エス・アイ・ラブ・ユー

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キラ・シングス・ビリー・ホリデイ

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