夢枕獏公式Blog「酔魚亭」

2009年12月

「西行取材で四国へ」第2回

西行取材2-1

西行取材2-2

西行取材2-3

 途中、馬頭観音堂が、海辺にあるというので寄ってきました。

雪文の器

今日、お歳暮を送るためにでかけた地元のお菓子屋、そこの2階の雑貨屋で一つの器に出会いました。
その名も「雪文の器」
小さな漆塗りの器ですが、その箱書きに「雪文の器」と丁寧な鉛筆書きで書いた紙が貼ってあるのです。
その文字に少し感激しました。
箱書きって、普通はもう少しカッコつけて書くでしょう・・・
その器の作者は若い女性です。
彼女の作品を手にするのは初めて。その人の人柄に触れたような出会いでした。
お金を出して作品を買うということは、その人へ贈る拍手だとか。
新しい感覚に出会い、即、拍手をした私。
この器は完全に観賞用。もったいなくて使えません。
螺鈿の水玉がぽつぽつと星のように埋め込んであります。
それと、雪文が一つだけ。解け忘れた雪のように。
これはただそこに置いて楽しむためのものです。なんだかジャズの古いレコードみたいですね。


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これがその箱書きです。


こんな年の瀬になってしまいました。
ジャズのためにお金を少しでもセーブしなければならないのに、いつもこういうことの繰り返しです。

もう来年のカレンダーは用意しましたか?
私は、いつもの月の暦カレンダーです。月の満ち欠けは昔からの古い暦。自分の感覚、体調(私は狼男かー!)と向き合うための暦でもあります。


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 静かな昼下がりに
     目の前に置いたポプラスベリーが光っていた。



今年はもう十分に働いたか!?
いえいえまだまだやる事が残っています。いつか、温泉でまったりジャズを聴きながら年の瀬と新年を迎えてみたいもんです。
来年はいよいよブログも独り立ちします。「Cloud」のレーベルも始動いたします。
ライブ製作集団Cloudとしても2度目の来日ライブツアーを行う予定です。
少しずつではありますが、確実に発信して行きます。
そして、これも少しずつではありますが、新しいファンを増やしつつあるのです。本当に嬉しいことです。
いつもいろいろ言ってくださる皆様のおかげです。ひとつひとつの言葉に支えられています。


こういう私ですが、来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
お風邪など召されませんよう。どうぞよい年をお迎えください。


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 これが、今年最後の贅沢、解け忘れた雪。

暮れの荻窪の街でAPJライブ

何もこのナントカ忙しいのにわざわざ・・・という感じですが。
昨夜遅く「アバター」を見に行き、一昨日にも遅くまで荻窪までAPJライブを見に行って来ました。
APJについてこのブログで書くのは初めてですので、少しご説明を。
APJというのは、難波弘之(p)水野正敏(b)池長一美(d)の3人によるピアノトリオ。APJというのは、アコースティック・プログレッシブ・ジャズを略してAPJだそうです。



素晴らしい音楽をやるのです。
プログレとジャズが好きな人にはある意味、たまらぬ要素がたくさん入っているそうです。
ただですね、このバンドの欠点(と言っても許してもらえれば)は、おしゃべりが長いこと。おしゃべりではなく正確にはMCと言うのですが。
音楽だけやってればめちゃめちゃカッコいいバンドなのに、真ん中に位置するM氏がマイクを取り上げて離しません。他のバンドでの思うようにしゃべれない「うっぷん」をこの居心地のいいバンドで一気に解き放っているのだとか。
それ程このバンドでは他のメンバーが寛容なのですな。
他のメンバー?メンバーは言わずと知れた寛容の生き字引のようなN氏とI氏。(敢えて、ここも名前は伏せます、私)

でもですね。
それなりに見回せばこのバンドの長いMCを楽しんでいるお客さんはいるのでした。ボケとツッコミ、関西芸人の血が騒ぐのかーっというMC。
その中に、獏先生の姿も。
楽しそうでなんだか幸せそうでしたよ。その夜も。
獏先生は難波弘之氏とは旧知のSF仲間です。二人とも言わば昔の熱いSF青年ですな。
難波さんの曲、「デメトラ」って、Dimension Travelerというのだそうですが、この3人の次元旅行はめちゃめちゃカッコいいですねん。
SF的要素がジャズに加わっているバンドは探してもそういません。SFオタクとジャズオタク、プログレオタクの交錯する、若いのか年なのかわからない不思議なライブでした。


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 荻窪で演奏中ではなく、MC中のAPJ。


私はと言えば、それはそれはですね、いつも彼らのカッコいい音楽にひたすら夢中になっています。池長一美がにこにこして言うには今夜はロックやりましたぜ、と。
カッコいいです、はっきり言い切ってくれるその潔さ。彼はジャズの人間なんですが、ロックをやらせても抜群のリズム感で迫り来るのでした。
獏先生ともライブの後、その音楽について話したのですが、ジャズという音楽の良さはその自由性なのです。だから私は思うのですが、難しく「正統派ジャズをやるべきだ」などというものに縛られてはいけません。私がジャズが好きなのは、寛容だから。
広く深いのです、ジャズは。


その夜、難波さんのピアノも歌っていて踊っていてリズム感もあり素晴らしかった。
水野さんも一緒にリズムの上を奔ってました。ぜひ次は、ウッドベースで奔ってもらいたい。

ライブの始まりが19時半。終わったのが23時。
昨夜は初めからトーク(MC)のための時間が余分に取ってあったそうですが、それもあっという間。
一度だけでもいので、初めから終わりまで、彼らの小宇宙の音楽をビンビン突っ走ってもらいたいような気もします。
そうなるとどれだけ凄いものが見られるのでしょうか。

なんだかいいバンドです、このバンド。


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 12月末、消えた庭の欅の葉。


「西行取材で四国へ」第1回

 西行が、崇徳天皇の墓をたずねた時の話しを書くために四国へ行ってきました。


西行取材1-1

西行取材1-2


 四度浦の海です。平賀源内の眺めた海ですね。

注:夢枕獏写真日記「西行取材で四国へ」は、会員制HP蓬莱宮で2008年6月に掲載したものをブログ用に再編集したものです。
 最新の夢枕獏写真日記は蓬莱宮をご覧下さい。

馬瀬合宿代回(最終回)

馬瀬合宿4-1

 ちょっと、対岸の細い流れをのぼって、野性のワサビをとりに行きました。



馬瀬合宿4+2

 とったワサビは、根を残しておいて、おひたしに。
 こういう時でも、釣りを忘れません。

「馬瀬合宿」了



新刊アンソロジーのお知らせ 

作家が、好きな近代文学をモチーフに書き下ろし!

文豪さんへ。

夢枕獏の短編とインタビューが収録されたアンソロジーが発売されました。

書名:『文豪さんへ。 近代文学トリビュートアンソロジー 』
著者:北村薫×夏目漱石・田口ランディ×中島敦・貫井徳郎×葉山嘉樹・夢枕獏×坂口安吾・宮部みゆき×新美南吉・吉田修一×芥川龍之介

目次:
縁側 北村薫 
――インタビュー 北村薫 夏目漱石「門」を語る
門 夏目漱石

虎 田口ランディ
――インタビュー 田口ランディ 中島敦「山月記」を語る
山月記 中島敦

あるソムリエの話 貫井徳郎
――インタビュー 貫井徳郎 葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」を語る
セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹

陰陽師 花の下に立つ女(ひと) 夢枕獏
――インタビュー 夢枕獏 坂口安吾「桜の森の満開の下」を語る
桜の森の満開の下 坂口安吾

手袋の花 宮部みゆき
――インタビュー 宮部みゆき 新美南吉「手袋を買いに」を語る
手袋を買いに 新美南吉

洋館 吉田修一
――インタビュー 吉田修一 芥川龍之介「トロッコ」を語る
トロッコ 芥川龍之介

編集=ダ・ヴィンチ編集部
企画協力=「DS文学全集」/任天堂
発行=メディアファクトリー
カバーデザイン=小林正樹
奥付発行日=2009年12月25日
定価=本体552円+税
ISBN978-4-8401-3146-9

本書収録の書き下ろし作品の初出は、ニンテンドーWi-Fiコネクションを通じて2007年11月〜2009年4月に配信されたものです。

「グレイクリスマス」のグレイに

グレイという言葉は、日本語では灰色です。
「灰色」という日本語の意味よりも、英語の「グレイ」という言葉には一つの魔法が込められているような思いがしました。私には美しい「グレイ」です。


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 コペンハーゲンのきらめくイルミネーション。



六本木の俳優座劇場で「グレイクリスマス」を見てきました。
演劇界の万年青年いつまでもお茶目なY氏のお誘いで、今年一番のお薦め、名作中の名作と言われる「グレイクリスマス」観賞です。時期もちょうど今、12月。12月はこの演劇を心から楽しみ、深く感じるためには必要な寒さの月。

「グレイクリスマス」の初演は1983年、本多劇場だそうです。
斎藤憐作。何度も何度も会を重ねての上演。
何度も上演されてきているのに、私は実は初めての観賞。
だから何の予備知識もなく、いつもの真っさらな状態で見て参りました。
誰がどの役をやるのかさえも知らない私です。

幕が開いて、という始まり方ではありません。暗がりの中、すでに舞台は用意されています。次第に明るくなる照明、そして静かに玉音放送から始まります。この音がすべてを語り始めるプロローグです。
私はと言えば、舞台の中央壁側に置いてあったピアノに初めから釘付け。これは絶対に単に置物として置いてあるピアノではない、と!
このピアノがどんな音を出し、何を奏でるのだろうかーーーこういう舞台の始まりはいつもワクワクします。

舞台は、伯爵五條家の離れ。
ストーリーは敗戦後のクリスマスから進められていきます。母屋をGHQに接収された五條家の物語と戦後民主主義が生まれていく日本の戦後の歴史がリンクしながら。
場面転換なしの舞台。
この場面転換なしのマジックは、一人の登場人物である「権堂」という男によって運ばれ、展開して行きます。清水明彦演じる「権堂」という人物は、語り部でありながら、なおかつ一本の貫かれた芯のような役割を演じています。
当然、権堂の演技がとても重要になって来る訳ですが、清水明彦氏の演じる権堂は素晴らしかったですね。私たちが彼を一つの安定感でもって追い続けていくことで、一つの軸が決まり、登場人物がどんなに多くでてきても、迷わずにストーリーについていけるのです。でも彼は主人公ではありません。主人公は多分、三田和代演じる「華子」というたくましく美しく瑞々しい一人の女性。そして、進駐軍将校のジョージ・イトウ。
これは淡くせつない、薄く積もった雪のようなラブストーリーなのです。


初演からもう30年近く、練り上げられてきた隙のない脚本、それからそれをしっかりと支える実力ある役者。
見ていて本当に心から楽しめ、そして戦後のあの時期にタイムスリップして、歴史について深く考えることのできる演劇です。
三田和代さんも素晴らしい演技でしたが、私は女中頭をやった長浜奈津子さんがとても良かった。彼女は演劇の女優という仕事の他に歌手でもあるそうです。そういう彼女の幅の広さが感じられる演技が魅力的。女中頭という役ですがとても素敵でした。
それから若く瑞々しい「雅子」を演じた若井なおみさんもよかったなあ。
脇を支える役者もすべて素晴らしい「グレイクリスマス」なのでした。



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 これは、レモンではなく冬至につきものの柚子です。
        うちの裏にたくさん生っています。
        宝のようです。



それで私がなぜこんなに「グレイクリスマス」をここで語りたいかというとですね。
えー、実は、斎藤憐氏は音楽を巧みにその劇の中にちりばめていく劇作家でもあるからです。彼の作品「上海バンスキング」はとても有名ですよね。
そういうわけで、ラブストーリーであり、歴史ストーリーであるこの劇の場面を縫う糸の一つが音楽でした。オルゴール、チェロ、ピアノ、ホールから流れてくるジャズ、蓄音機で流されるレコード、歌、などなどあらゆる音がちりばめられ、また音が場面をつなぐ糸となって縫い上げられていきます。
そうなんです。この「グレイクリスマス」の中にもジャズが。
戦後の進駐軍といえばやはりグレンミラーとかデュークエリントンとかでしょう。もちろん彼らの曲も使われ、そして、何よりもこの劇のタイトルとも深い関係のある「ホワイトクリスマス」も効果的に使われていました。


ホワイトクリスマスは、雪のクリスマス。
すべてを覆い隠してしまうのがホワイトクリスマス。でも、グレイクリスマスは・・・。
「真実を隠すことのないクリスマス」ということなのです。日本語の「灰色」ではなく雪の降らないクリスマスのことだったのです。
「この劇の真実は隠さずここにあります、日本の現在の民主主義についても少し考えてみてください」という作者のメッセージが込められています。
実はこれは本当はラブストーリーではなく、真実のストーリーはこの劇を見終わった私たちの心の中に、ということだったのしょうか。

この劇のテーマは少し重いテーマかもしれませんが、私は楽しみました、音楽と共に。

戦後から現在の日本につながる歴史の真実と、それから登場人物を演じた役者が放った心のかすかな真実が、私の心の中に残されて、小さな灯りとなって今、灯っています。
演じた役者の方々に、それから作者、斎藤憐氏にも「よかったですよ」とお伝えしたいです。

最後に。
お茶目なY氏が興奮しておっしゃるには、今年の演劇の中で、もう一つキラ星のように輝いているのが、大滝秀治さん演じた「らくだ」だそうです。うううーむ、見たかったです!これ。

今回のブログも長くなり申し訳ありません。
もっと短くまとめろよな、という声が聞こえてきそうです。いつも反省しています。はい。



09_12_22-3

 クリスマスより、お正月より、自分にとって一番大切な日。
      それは自分の誕生日。
      それは言わば、精神再生の日です。


新刊のお知らせ コミック版『大帝の剣 』4巻発売

異形の怪物・権三と剣聖・宮本武蔵の登場で、さらに加熱する剣戟バトル!

フランス、イタリア、台湾、タイでも熱狂的支持を受ける超絶時代活劇最新巻!


大帝の剣4巻オビ

 原作=夢枕獏・画=渡海(ドヘ)
 書名:「大帝の剣 4 天魔の章 妖魔復活編」

目次:
一章 犬権三 其の一
       其の二
       其の三
       其の四
       其の五
二章 怪人剣 其の一
       其の二
   
あと描き

発行=エンターブレイン
カバー画=渡海
装丁=椿山喜昭+HONDA GRAPHICS
奥付発行日=2010年1月5日
定価=本体680円+税
ISBN978-4-04-726211-9

本書は、月刊コミックビーム 2009年3月号〜2009年9月号掲載分に加筆・修正したものです。

コミック「大帝の剣」は『月刊コミックビーム』で、小説「大帝の剣」は『週刊ファミ通』で連載中。

2010年1月の新刊

蝉丸にとり憑いた妖女の正体は?

晴明の呪、博雅の笛とともに平安の闇を祓う蝉丸の琵琶。
盲目の法師の哀しい過去がいま明かされる―。

400万部突破の人気シリーズ最新巻!



陰陽師 天鼓ノ巻

 著者:夢枕獏
 書名:『陰陽師 天鼓(てんこ)ノ巻』

収録作品(順不同)
「瓶博士」
「器」
「紛い菩薩」
「炎情観音」
「霹靂神」
「逆髪の女」
「ものまね博雅」
「鏡童子」
 あとがき
巻末に「夢枕獏 著作リスト」が付きます。

装画:村上豊
発行:文藝春秋
奥付発行日:2010年1月30日
定価:1350円(本体1286円+税)
ISBN978-4-16-328860-4

2010年1月27日に陰陽師シリーズの最新刊『陰陽師 天鼓ノ巻』が発売されます。
(注:27日に店頭に並ぶのは一部の書店のみ)

連載情報「天海の秘宝」

『週刊朝日』に連載中の夢枕獏「天海の秘宝 〈法螺右衛門江戸噺〉」がクライマックスを迎えています。

発売中の2010年1月1日・8日号に、
夢枕獏「宿神」 第52回 【巻の十五 大決戦(八)承前】が、
掲載されています。


週刊朝日2010年1月1日8日合併号

『週刊朝日』2010年1月1日・8日号合併号
 発行:2010年1月8日
 発行所:朝日新聞出版
 定価:380円(本体362円)
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