夢枕獏公式Blog「酔魚亭」

2009年11月

セバスチャン・サルガドという写真家

人は美しいものに動かされるーーー

写真の持つ力。それは時に凄まじいほどのインパクトで私に迫って来ます。
報道写真がそうです。事故現場の写真。戦争被害の写真。貧困と飢餓の世界。世の中で起きている理不尽な出来事の数々。泣き叫ぶ人たち。それは映像よりも鋭く私の心に突き刺さってきます。
できれば見たくなかった。あまりにダイレクトすぎて私はその写真から目を背けています。それで自己嫌悪に陥ることもあります。
目を背けてはならないだろう?社会の現実を知るべきだろう?と。

でも、もし美しい写真を見せられたとしたら、思わず見入ってしまうでしょう。
惹き付けられて、心はその写真とどこまでも遠い旅をするでしょう。
同時に美しい写真は人の心を癒します。人は根源的に美しいものに惹かれるのです。


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 コペンハーゲン映像ミュージアムの中にある美しいカフェ
           外の景色は学校の校舎、時折学生の姿が見える。



恵比寿の東京都写真美術館で開催中のセバスチャン・サルガドの「アフリカ」という写真展に行ってきました。
サルガドは1944年ブラジル生まれ。現在65歳。
軍事政権下にあった故郷ブラジルを離れ、パリ大学で経済学を学び、その後、ロンドンに本部を置く国際コーヒー機構に就職。そこでアフリカに派遣され、それがきっかけで写真を撮るようになり、写真家に。彼の写真はアフリカが重要な舞台。アフリカは彼にとっては人類の根源的な舞台。その被写体の魅力に取り憑かれ、そしてそれから派生して生み出される彼の作品群。
今回の恵比寿での展示のテーマは「アフリカ」
30年ほどの間サルカドが撮り続けてきた写真の変遷を辿る、という意味でもとても興味深いものでした。
彼は現在「GENESIS」(起源)というテーマで世界各地の自然、動物、先住民族の撮影をしているところだという。その近年の作品2006年に撮った写真などが30点ほど、その他にも70点ほどの写真が今回の写真展で見られます。


「バガウラ放牧キャンプのディンカ族/南部スーダン、2006年」
私はただその写真に惹かれ、写真展を訪れました。
その美しい写真がただただ見たいがために。
これは、絵なのか!写真なのか!
モノクロの、抽象画のような静謐の写真。ここまで静かに光景を切り撮ることができるのか・・・
他にも近年の美しい写真が数多くあり、年をとって彼はまた違う哲学の中に入り込んできていることがわかります。
「カオコランド地方オルタンダに暮らすヒンバ族の女性/ナミビア2005年」
「ナイル川の水で満たされたゲル運河の沼地で魚を獲る人々/南部スーダン、2006年」などなどは面白く美しかったですねー。私には。

でも。今回の彼の写真展、展示者の意図はそこにあったのか、と私が気づいたのは入ってすぐ。
この写真展の意図。テーマは「アフリカ」この30年あまりのアフリカの現実、歴史を知ることになる大変に興味深い写真展でした。サルガドは厳しい現実を美しく切り撮る希代のジャーナリストであり写真家だったのですね。
彼の経済学からの視点、彼の哲学のフィルター、彼が掬い取る人の弱さ、彼が切り撮るアフリカの様々な遍歴をひとつひとつ見せてもらいました。
それはすべてがモノクロの世界。
モノクロゆえに語るものは多いです。
ひとつひとつと対話しながらゆっくり見てきました。
すべてがインパクトのある素晴らしい写真でした。
本来なら私は避けて通っていたでしょう写真の数々。報道写真、ジャーナリズム性の高い写真の類いは前述のとおり、あまり見たくない私ですので。
でもしっかり見てしまいました。
展示者の意図にまんまと引っかかってしまいました。


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 サルガドの写真展の図録とチケット。


ああー、そういう訳だったのです。
ジャズと関係ないですね、今回のサルガド氏のこと。
サルガドの写真からは何の音楽も聴こえてきませんでした。それくらいインパクトの強い写真なのです。それだけでシンプルに美しさが成立しています。
でも写真展を出て歩きながら、やっぱり私が戻って行ったのは「JAZZ」
山手線の中で一人でジャズを聴きながら帰りました。ベースの弦の響きが素晴らしいCharlie HadenとKenny Barronの「Spring Is Here」


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 コペンハーゲンのブックカフェ 
   オレンジの照明と静かに時間を過ごす人たちがきれいで
   思わず写真を撮ってしまった。



そう、ジャズ!
そうでした、昨日、青山BODY&SOULへ。アムステルダムから帰国中の女性ピアニスト小橋敦子さんを聴いてきました。
ベーシストの井上陽介氏を迎え、Duo。いいですよね。静かに聴くジャズの極みですね。初めて聴く小橋さん。オリジナルも良かったのですが、印象的だったのは、スタンダード。やはり心の中に同じメロディーを共有していることでグンと身近になれます。
ウェイン・ショーターの「Foot Prints」良かったですね。おかげでウェイン・ショーターをじっくり聴いてみたくなりました。それから、何と言っても、彼女の声まで聴こえて来そうな「Cry Me A River」これは、ただただ美しく、そして力強かった。これは男のピアニストでは多分だめだと思うのです。長く人生を見つめてきた女性である彼女ですから弾けるのです。多分、私と同世代。女はいつでも逞しく美しく強いですなー。

連載情報「闇狩り師 キマイラ天龍変」

 徳間書店『月刊COMICリュウ』2010年1月号
 夢枕獏×伊藤勢「闇狩り師 キマイラ天龍変」が掲載されています。
 単行本第一巻2009年12月12日発売決定!


コミックリュウ2010年1月号

 徳間書店『月刊COMICリュウ』2010年1月号
 特別付録 手塚治虫「来るべき未来」クリアファイル

「南アフリカ 釣りの旅」第36回

 やっと、レインボーを一尾ゲット。
 もう少し釣りたかった。
 ガイドと一枚。


南アフリカ36-1

南アフリカ36-2

新刊のお知らせコミック「餓狼伝24」

原作=夢枕獏
漫画=板垣恵介
書名=『餓狼伝 GA-ROU-DEN 24』


コミック餓狼伝24


目次
vol.216
vol.217
vol.218
vol.219
vol.220
vol.221
vol.222
vol.223
vol.224
vol.225

発行=講談社(イブニングKC)
カバー画=板垣恵介
カバーデザイン=Hisao Ogawa
奥付発行日=2009年11月20日
定価=本体533円+税
ISBN978-4-06-352287-7

本書は、イブニング2009年 第5号、7号〜11号、13号、14号、16号、18号に掲載された作品を収録したものです。

原作=双葉社「餓狼伝」シリーズ・「新・餓狼伝」シリーズ

「南アフリカ 釣りの旅」第35回

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 この土地を通って川へ。

新装版 闇狩り師 BOX

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 かっこいい「闇狩り師BOX」の見本が徳間書店から届きました。


闇狩り師box_2

『闇狩り師〈新装版〉』
『闇狩り師 崑崙の王〈新装版〉』
『闇狩り師 蒼獣鬼〈新装版〉』
『闇狩り師 黄石公の犬』
 が入ります。


「南アフリカ 釣りの旅」第34回

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 次の日早朝に出発。
 もやがだんだん晴れてきました。


南アフリカ35-2

 こういう道を車でゆきます。


「南アフリカ 釣りの旅」第33回

南アフリカ33


 陽が暮れて、宿へもどります。

『本の雑誌』に登場

 夢枕獏が『本の雑誌』12月号に、
同誌10月号の北上次郎氏「私が生きている間に夢枕獏のすべてのシリーズは完結しないだろう」発言に答えるかたちで、
「突発コラム 北上さんあと10年生きていただければだいじょうぶですよ」というエッセイを書きました。


本の雑誌09年12月号

 『本の雑誌』12月号 担々麺噴火号
 シリーズ作品がいつ頃完結予定なのか?
 興味のある方は、ぜひお読み下さい。

「南アフリカ 釣りの旅」第32回

南アフリカ32

 こんなところを歩いて、小川で釣り。
 ぼさがかぶさっていて、一尾も釣れません。
プロフィール

夢枕 獏

作家、1951年1月1日、神奈川県生まれ。 東海大学文学部日本文学科卒。
1977年に作家デビュー。 以後、『キマイラ』『サイコダイバー』『闇狩り師』『餓狼伝』『大帝の剣』『陰陽師』などのシリーズ作品を発表。 1989年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。2011年『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞。同作で2012年に吉川英治文学賞を受賞。
漫画化された作品では、『陰陽師』(漫画 岡野玲子)が第5回手塚治虫文化賞、『神々の山嶺』(漫画 谷口ジロー)が2001年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をそれぞれ受賞。 映画化された作品に『陰陽師』『陰陽師2』(東宝)、『大帝の剣』(東映)などがある。

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