夢枕獏公式Blog「酔魚亭」

2009年08月

「忘竿翁日記 その二」第1回

 一月某日、小田原で「宿神」のイラスト展をやりました。絵を描いていただいている飯野さんとのトークショーもあって、なかなか楽しい時間をすごしました。ぼくも初めて、これだけたくさんの絵をまとめて見させていただきました。

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注:この、夢枕獏写真日記「忘竿翁日記 その二」は、
会員制HP蓬莱宮内で、2008年3月3日から3月26日にかけて掲載したものを、ブログ用に再編集したものです。

最新版の夢枕獏写真日記は会員制HP蓬莱宮をご覧下さい。 夢枕獏事務所

夏の名残りの約束の日  Andrea Bocelli L'A ppuntamente

夏が戻って来ました。
草むらではコオロギが鳴き、空の雲が高くなって来たというのに、季節が夏に逆戻りしたかのようです。
この浮遊感。


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久々に歩いた山梨の森です


朝、熱帯雨林の中のテラスでバナナパンケーキを食べたことを突然に思い出しました。
もう随分前のことです。
インドネシアのバリ島の中のウブドにある小さなホテルでしたが、とても居心地がよく一日中ホテルの部屋にいても従業員はなぜか親切です。
部屋にいても迷惑な顔をしない、それどころか楽しいことを次から次に提案してくれる。
朝ご飯の時はバナナパンケーキを薦めてくれて、特別に焼いてくれます。
そんな扱いを今までどんな高級ホテルでもどこでも受けたことがなかったので私は驚きと大感激でした。

サービスに対しお金が特別に加算される訳でもないのです。
ココナッツジュースが飲みたいと言えば、今は無理だけど、明日の朝飲めるようにしましょうって言ってくれる。
なぜかと言えば、あの生っているココナッツの実を落としてもらわなくてはならないから、とジャングルのヤシの木を指差して言う。朝食を食べているテラスの向こうがジャングルで、下を渓流が流れていてその音がテラスまで響いてきます。
部屋の庭にはプールがあって鳥が水浴びをしにやってきて、一緒に水に浸かっていても逃げない、まるで楽園のような場所。
少し出て歩けば、ウブドの村を見て回る散歩コース。村の人も特別扱いして私たちを見ている訳ではない様子。
部屋のプールの脇の別棟には、CDが聴けるオーディオが置いてありバリの音楽CDが聴けるようになっていて、音楽の好きな人への心遣いも、しっかり。

少しのお金をためて、こういう休暇を過ごせる、本当に贅沢なことです。
人生にはたくさんのつらいことや思うようにならないことがついてまわりますが、こういう心からのサービスをやってくれる人たちに出会うだけで、お金を稼ぐことや休暇をとることや他人にサービスをするということがどういうことなのかを実感できる、そういう場所がウブドにありました。
明日から頑張れそうだ、明日からはもう少し丁寧にいい仕事ができるかもしれないという、心に栄養をもらえるような場所。
こんな心からの贅沢をできる人が何人いるのでしょうか。ウブドに行かなくても本来ならば日本でもできるはずです。こういう心の休暇をとること。余裕を実感すること。


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琵琶湖にて、子供たちの乗ったボートに出会いました。お互いに手を振りあって別れるこの感じ。


日本。
みんな一生懸命にお金を稼いで、それなりの暮らしをしているのに、自分は幸せではないと思っている人がどんなに多い国なんでしょう。
サービスも福祉も医療も知識も、すべてお金だと思わせてしまうこの国。
そう思わせてその気にさせてしまうマスコミにも責任があると思いますが。本来は自由で素晴らしいこの国に住んでいて幸福度はもう少し高くあってもいいような気もします。

お金は少しの余裕のために自分に残って、その残りは社会に還元し、そのお金を安心して任せられる政府があればすべて解決するような気がします。
安心して任せられる政府。
それを国民が容易くチェックできる機関、体制。
次の選挙でどうかわるのでしょうか。この文章をアップする頃は政治の地図が変わっていますよね、多分。
この機会にひとりひとりが自分の頭で考え、何が心のよりどころかを見極めて欲しいと思っています。
大勢に流されることなく。自分の意見で議論できる、そして相手の話も聞けるような余裕のある日本人が一人でも多く育ってくれますよう。


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湖南三山の一つ「常楽寺」で見つけた小さな石仏の優しい顔。この広いお寺、住職が一人ですべてやられています。いいお話を伺い、誰もいない本堂でそっとお布施を・・・。何もできない私からのエールです。




夢枕獏「私が生まれたかったこの時代」

「文藝春秋 SPECIAL」季刊秋号の、
「作家の想い 私が生まれたかったこの時代」に夢枕獏が答えています。

「平安の歌合わせと、明治の柔術」 夢枕獏

「文藝春秋 SPECIAL」季刊秋号(第十号)
2009年10月1日発行
発行:文藝春秋
定価:一〇〇〇円(本値九五二円)

文藝春秋SP 2009秋号

「台湾道中記」第21回 最終回

 帰る日の昼食に、スタッフを招待して、北京ダックを食べました。
久しぶりに、おいしい北京ダックを食べたのでした。

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 いや、楽しい旅でした。
 台湾、また行きたいところです。

「台湾道中記」終わり

 この夢枕獏写真日記「台湾道中記」は、会員制HP蓬莱宮内で掲載したものを、
ブログ用に再編集したものです。
 最新版の夢枕獏写真日記は会員制HP蓬莱宮をご覧下さい。
 
                  夢枕獏事務所

「台湾道中記」第20回

 帰りの日、ホテルの部屋から外を。

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「台湾道中記」第19回

 キリューの屋台通りを歩きました。

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 ここで、ギョーザをいただきました。

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「台湾道中記」第18回

 夜になって、キューフンへ。ここは、古い街並みが残っています。

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宮崎駿さんの『千と千尋の神隠し』の街のモデルにもなった場所です。
あまりに観光化されすぎているように思いましたが、楽しい街でした。

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文庫化情報

著者:夢枕獏
書名:サイコダイバー・シリーズ『新・魔獣狩り5 鬼神編』

目次
一章 地龍咆哮
二章 帝都炎上
三章 三獣士
四章 鬼龍祭
五章 蝙蝠老人
六章 闘神
七章 対決
八章 鬼神祭
九章 悪夢屋
十章 犬千代
転章 魔獣の森
あとがき

カバーイラスト=寺田克也
カバーデザイン=中原達治
発行所=祥伝社(祥伝社文庫)

奥付発行日=2009年9月5日
定価=本体638円+税
ISBN978-4-396-33523-6

この作品『新・魔獣狩り5 鬼神編』は、平成十年一月にノン・ノベルから新書判で刊行されたものです。

新・魔獣狩り5

夢枕獏インタビュー掲載誌


夢枕獏へのインタビュー「最強ロマンとは何か?」が、
「Kamipro 紙のプロレス」138号に掲載されています。

小説家 夢枕獏インタビュー「最強ロマンとは何か?」

2009年9月5日発行
発行・発売:エンターブレイン

紙プロ138

仕事の停滞には好きなジャズで思い切り弾けてみる

実は今、デンマークとのジャズの仕事が停滞していて思うようにすすんでいません。
デンマーク人とのやりとりでは時々こういう停滞が起ります。
夏休みモードだと言ってしまえばそれまで。
そうは言っても、そういう訳にもいかずという場所で、足をばたつかせてただただ過ごしています。日本という忙しい国の中にいる日本人の私です。
相手のペースで仕事が思うように運ばないというのはつらいもんです。ほんとに。

で、ですね。ならばと本業の仕事のサポートで取材に行って来ました。

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取材で怪しい神社発見。ご神体は「山」です。うやうやしくおごそかに登らせていただきました。


実は、取材は名目で、ドライブしてジャズを思い切り、てなわけではないですが。
行き帰りの車の中は至福のジャズ一色です。助手席で聴かされる相手には迷惑な話だと思います。すみませんでした。
ま、そこは我慢して助手席で寝ててもらって。

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ハイウェィから見る夕刻の富士山  高速の入り口を間違えて入ったために大月インターでUターン。その遠回りのお陰で夕刻の富士山に出会えました。

知り合いの北海道のジャズの好きな先生の話ですが、釣りに行く車の中で車のドアが振動でがんがん響くような音でジャズを聴かれるそうです。多分年齢はアラシッだと思いますが。
素晴らしいです!と手をたたいて応援する私です。その若い行為、北海道の誰もいない原野でだから許されるんでしょうね。
私がうちの近くでやったらこれ、もしかして逮捕されるかもです。
こわくてできません。
でも時々、こそっとやってます。
それは夕方の誰もいない箱根ターンパイク。
がんがんジャズドラ最高だす。
ああ、年なのにどこまでも危ない私です。

そうです!
仕事が停滞する時には、やっぱりジャズです。
ううーむ、なんだかんだでジャズしかないですね。

マグナス・ヨルト来日時の「お茶の水ナル」ライブの録音、これはストレス解消に最高の録音盤です。
客席と演奏者が一体になった素晴らしいライブ盤で、共感してくれる人も多いライブ録音です。
聴く度に鳥肌が立って心が震えます。こういう盤が世間に認められるかは二の次、早くリリースしたくてうずうずしています。

が!!「上記(一番上に記したとおり)の理由で停滞しています。
お仕事スパイラルのただ中にいます。
いわゆるデンマークハザードですな。
日本人でデンマーク人と仕事をされている方、皆、この停滞感覚をどうやってやり過ごされているんでしょう。
それとも、ダメで鈍な私だけなんでしょうか。こんな思いをしているのって。
私の仕事のパートナーはデンマーク人。彼らの人柄は大好きで私もよく分かっているつもりなんですが、しばらくこのハザードは続きそうです。
デンマーク人とつき合う方法。デンマーク人に詳しい方、お教えください!

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夕方の芦ノ湖。勢揃いしてお家へ帰る白鳥ボートたち。なんだかいい子たちすぎてウルウル。
プロフィール

夢枕 獏

作家、1951年1月1日、神奈川県生まれ。 東海大学文学部日本文学科卒。
1977年に作家デビュー。 以後、『キマイラ』『サイコダイバー』『闇狩り師』『餓狼伝』『大帝の剣』『陰陽師』などのシリーズ作品を発表。 1989年『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞、1998年『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞。2011年『大江戸釣客伝』で泉鏡花文学賞と舟橋聖一文学賞を受賞。同作で2012年に吉川英治文学賞を受賞。
漫画化された作品では、『陰陽師』(漫画 岡野玲子)が第5回手塚治虫文化賞、『神々の山嶺』(漫画 谷口ジロー)が2001年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞をそれぞれ受賞。 映画化された作品に『陰陽師』『陰陽師2』(東宝)、『大帝の剣』(東映)などがある。

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