2011_02-25-1

ガーシュインのサンプル盤

「12月。ガーシュインに埋没」から3ヶ月あまり。
新しいアルバム『Gershwin. 』がCloudからいよいよ4月にリリースです。

12月に一人「よし出そう」と決め、この数ヶ月はそれを次第に形にしていく道程の中にいました。
出すのを決めるのは一人。ですが、その後の作業はすべて人との駆け引きです。
言葉のなかなか通じない遠いヨーロッパの地が相手。
写真はどれを使おう。遠い国のフォトグラファーとのやりとり。
テキストは正確か。向こうの会社には表記の問題ないか。
肝心のミュージシャンは大丈夫か。
曲順は?そしてタイトルは?
マスタリングはどうすればいいのだろう。
音源は無事日本の工場に届けられるのか。
そしてこちらのディストリビューターは協力してくれるのか。
日本での宣伝は?
それから大切なライナーノーツの原稿は。
そして最も大切なデザインは・・・。

頭の中から得体の知れない何かが次第次第に解放されていき、形になって現れていく過程。
何気なく触れた一音から心が解放されていくショパンの楽曲のよう。
ううむ、この例えは美しすぎるな。私には似合わない。


マグナス・ヨルト新譜のタイトルは『Gershwin.』。
春の光が一番輝き始める季節にこの世に生まれでて来るガーシュイン曲集です。
若いジャズピアニストの気持ちがこれほどに真っすぐに現れたジャズのガーシュイン集は今までになかったのではないかと思います。
作品を貫いているのはシンプルな飾り気のないヨルトのピアノです。
彼は敢えてこういうアプローチにしたのだといいます。
こんなのもありなんですね。初めてその音を聴かされた時、私は本当に驚きました。これでいいのか!
いいんだそうです。いつもはヨルトは変拍子を多用、これでもかとガンガンにその曲想を変えて演奏しますが、今回は全く逆です。
弦楽四重奏団とピアノトリオという構成。
誰も口を挟まない、余計なプロデューサーはなし。
これはすべて若いヨルトのプロデュースです。
そして最終のマスタリングを行ってこれを作品に仕上げたのはデンマークの名工といわれるBjarne Hansenです。ジャケットを飾る写真は素晴らしい写真家Stephen Freiheitの作品。


さてさて今私はそのプロモーションを行っているところです。
昨日、サンプル盤を頼んでいたところから届いたメディアに送るためのCD-Rは、なんとバルクと呼ばれるCD-Rの塊のまま。あああ、これは向こうのミスです。ギリギリで動いている今、このミスは大変に痛いミス。
ですが、あまりに美しいので写真にとってしまいました。


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これがそのバルク



その他にも、レーベルで同時進行中のアルバム制作があります。
これも一年あまりそのままになっていましたが(大切に保存していましたと言う意味ですよ)ようやく始動しました。
先日、マスタリングという作業を日本で初めてやってきました。
ビクターの工場の中にあるKOTETSU'S ROOMという素晴らしい空間の中で延々10時間(!)程の時間をかけてくださりなんとか作業を終えました。
この作業は私にとっては至福の時間でした。
なぜかと言いますと、そのエンジニアのK氏のお仕事場は、アナログレコードのカッティング作業もできる空間。
特別仕様の本当にシンプルなコンソールマシンと特別な電源コードが引かれたそのスタジオ空間は私には夢のような空間でした。そこで音楽とじっくり向き合い10時間あまりの作業。次第に「聴く」という私にとって一番大切な感覚も麻痺してくるのがわかります。ですがK氏はその道30年以上のベテランなので怖いものは何もありませんでした。本当にお世話になりました。


その部屋で、K氏が、ご自分の魂ともいうべきカッティングの機械を死守された経緯のお話をお伺いしているうちに思わず涙が。
レコードのカッティングという古いやり方は今の新しい工場にはいらないからと会社から切り捨てられようとしたのだとか。
そこを死守されたというお話です。
ものを作るということは魂の作業でもあるのですね。
その魂に触れた思いでした。
そんな話をお伺いしながらのマスタリング作業でしたので、素晴らしいマスタリングができたのは言うまでもないです。
深謝。
日本の名工といわれるK氏のマスタリングによる、デンマークの若い才能あるミュージシャンの音源。こちらはジャズというよりロックに近いです。素晴らしい。
こちらもどうぞお楽しみに。


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景色の中のバルク 美しい! オブジェのようだ。