キッチンで不良おばさんが一人でワインをのみながら、晩ご飯の支度をしていると、友人から電話が・・電話の彼女は少し酔っているのかしらんとても元気な声で「メリークリスマス~」
ああーっそうだったのだ、今宵は魅惑のクリスマス・イブなのだ。
彼女から楽しい時間をもらい、不良おばさんは受話器を置いて、そして、また一人ワインを。

デンマークでは一人でイブを迎えるなんて悲劇そのものなのだとか。
一人で過ごす人がいる、なんてことは許されず皆で誘いあってあげてこそのクリスマス・イブ。「マッチ売りの少女」の話も遠い昔の今は優しいデンマークです。
ここはデンマークから遠く離れた日本の国。
家人は、いつものように忘年会。
私は一人で、何のことはないいつもと同じ冬の夜。

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 テーブルの上に置かれたチューリップ


電話をくれた友人から「CDがJAZZJAPANの11月の山野楽器売り上げベスト15に入っていたよ」と教えてもらう。
実は私はその電話をもらう前にすでにそのことを知っていたのだけれど、受話器を置いた後、嬉しくて手元にあった最新のJAZZJAPAN誌を再度開いてみました。
あるある!
よく頑張ったなあ!私のプラムンたん!(アルバム『Plastic Moon』を勝手に略)
よしよし。いい子だ。
インディーズレーベル、それも多分世界で最小マイナーレーベルなのによく頑張った!
(でも本当に頑張ってくれたのは、もちろんバイヤーの方です、本当にありがとうございました~)

そのJAZZJAPAN誌の中野俊成氏のコラム「FOOL STRUTTIN」に、村上春樹氏と和田誠氏との共著『Portrait in Jazz』のことが書いてあった。
その著書の中で私も気になっていたエラ・フィッツジェラルドのところ。
エラの歌う「These Foolish Things」という曲。
村上春樹さんが「ジャズというのはひとつつぼにはまれば、人をこんなにもよい気持ちにさせてくれるものなのか」と書いていたくだり。
コラムには中野氏が意固地になってその「These Foolish Things」が入った希少なLPを求めるためにとんでもない心の旅をしたのだということが書いてあった。文の中からジャズマニアの悲しい光景が浮かんでくる。
マニアは一人心の旅をするのだ、いつの世も。


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 ボタン


エラの歌う「These Foolish Things」。
今となっては入手困難な曲のはずでしたが、私は中野氏のコラムの最後に書いてあったiTunes Storeの最も簡単に手に入る方法で、一人で過ごすイブの夜、こっそりとアルバムごとダウンロードしました。
アルバムが1800円。49曲で1800円。
このアルバムには、ルイ・アームストロングとのデュオ「Summer Time」も、それに「Bess, You Is My Woman Now」も「I Got Plenty O'nuttin」も、今私が夢中になっているGershwinの「Porgy & Bess」の曲も聴けて、おまけに「The Nearness Of You」「Under A Blanket Of Blue」「Moonlight In Vermont」と、宝石箱のようにたくさんの曲が入っていました。
これを一気にダウンロードするなんて!
ジャズおじさんたちからは安易すぎる、とんでもないと切り捨てられそうなお買い得「今時の若いお兄さんとバーゲンに弱いおばさん」式です。うふふ。


ですが、これは一人で過ごす夜にラインの向こうからやってきた思いがけない極上のクリスマス・プレゼントでした。
その中でもちろん私が一番聴きたかった曲「These Foolish Things」
これは珠玉の一曲でした。
歌詞のとおり隣のアパートから聴こえてくるピアノのように、エラの声に寄り添うオスカー・ピータンソンのピアノもさりげなくて本当に心地いい。

初めに届く水仙の花束
次に届く長くすてきな電報
小さなテーブルの隅に置かれたキャンドルの灯り
今でも心はときめいて
そんなつまらないことであなたを思い出す

ゆったりと語りかける「These Foolish Things」の歌詞が冷えた心に芳醇なワインのように入って来ます。

このアルバムのメロディを掌の上にのせて夜空をみれば。
空には氷砂糖色した下弦の月がぽっかりと浮かんでいました。
エラとルイと今宵の月と。
ああ、とろけるように素敵な夜だなあ。


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 机の上のパソコンとコーヒー


今年はこれがyyの最後の書き込みです。
皆様、よいお年をお迎えください。
そしてまた来年もどうぞよろしくお付き合いくださいませ。