こういう表現ではどうだろう。

私はこの音の首飾りをいつでも身に纏って出かける。
いつでもどこでも眺めてはため息つき、この美しさに惚れ惚れとし、皆に見せて「どうだっ!」と言いながら世界中を旅して歩く。


2010_02_12-1



その時、皆がえーーっ?と口を空けて私の方を見続けた。
「ありえない!同じ曲をどうして一枚のアルバムに2曲も入れるのだ?」
真面目に、大人なマグナスも私へのメールでも言い続けた。「おかしいよ、それ」

それはアルバム『Someday. Live in Japan』に入れるトラック(収録曲)のことでやり取りしている時。
プロデューサーである私が提示した「Someday My Prince Will Come」
この曲が1枚のCDの中に2曲も入っているという事実に皆が気づいた時。
でもかなり頑固な私は、かなり頑固な皆に「これだけは譲れない」と渋とく、しつこく言い続けた。
「よし、こうなったら私の本気度をみせてやる」と私はデンマークに出かけて行って収録曲について頑固なジャズピアニスト、マグナス・ヨルトに直談判。
「日本人女性はこういう曲が好きなのだマグナス、この曲を入れればマグナスの女性ファンが倍増するはずに決まってるじゃん、いひひひ」
と、私がマグナスに言ったかどうかは忘れましたが、マグナスは意外にもすぐにSomedayを2曲入れることについて折れてくれた。
なんだーっ、それなら最初からそう言ってよ。
でも多分、突然にデンマークに押し掛けてきた私の気迫に、真面目なマグナス青年はビビったのだと思う。それにタイトルに関してもすんなりと「Someday」でOKだよと言った。
いい奴だ、マグナスは。
つくづくそう思う。
そういう経緯でマグナス・ヨルトのライブ盤アルバム『Someday. Live in Japan』の収録曲は決まったのです。

お茶の水NARUでの録音曲、揉めに揉めた「Someday My Prince Will Come」は最後にボーナストラックとして収めるということで一件落着。
でも本当のことを言うと、それにはマグナスからの条件提案があったのです。
ボーナストラックに入れる「Someday My Prince Will Come 」は、最後の曲「Bess~」の終わった後30秒後に入れてね、という彼なりの、なかなかいじらしい蘊蓄ある提案でした。
が、実は私はこれを守っていません。
マグナスは私のこの裏切りをまだ知りません。
私は悪いプロデューサーですだ。
ボーナストラックまでの30秒の無音のインターバルはあまりに長過ぎです。ご免、マグナス。
大人だけど真面目でガンコなマグナスはこれを知ったら怒って日本に飛んでくるかもしれません。
その時はどうしよう。


何んでこんな内輪話をここでするのだと言われそうです。

今回CloudからリリースするCD『Someday. Live in Japan』についてのエピソード。
語れば尽きません。もっと語りたい、あああしゃべりたい。
みんなプロデューサーってこうなのでしょうか。それとも私だけですかね。
こんなお喋りなヤツって。


2010_02-12-2



一枚のCDを作るということはまさしくいろいろなことの積み重ねと経緯からできています。
昨日『Someday. Live in Japan』がプレス工場から届きました。
届けられてきたのは段ボール箱にぎっしりと詰まった私の作品。
目の前にできあがったばかりの沢山のCDを見た時に、これがこれからいろいろな人の元へ届けられてそれが広がって行くのかと思うと、感無量で涙がこぼれそうになりました。
私のディストリビューターでもあるB社のT氏は、20代の時、初めて出来上がった自分の手がけたアルバムが世界中の誰よりも早く自分に届いた時、その夜はそれを抱いて寝たとか。
なんてせつない美しい話なのでしょう。
皆同じような気持ちなのです。

この、何か愛おしくなるような不思議な気持ち。
よしよし頑張ったなと優しく頭を撫でてあげたいような不思議な気持ち。
自分で自分に捧げる想い。
あまりに沢山のことがありすぎて、もう二度と同じことはやりたくないというくらいに長い道のりの果てに訪れるこの気持ち。
それは今まで想像することはできましたが、実際に経験してみて初めてわかった気持ちです。
私はいつまでもこの気持ちを大切にCDを作り続けて行きたいと思っています。

自分の作った作品は、私が身につける最高の宝石「音の首飾り」です。
音の鉱石の山から自分が掘り上げた石で作る、世界中探してもどこにもない最高の首飾り。
身につけて歩けるものならいつもこれを身につけて、いつでも手に触れ、この重さを確かめながら歩いて行きたいものです。
重いけれど、それはとても心地いい重さです。

本当にありがとう。
ミュージシャンにもそれからオーディエンスの方々にも。
「ありがとう」ともう一度。


2010_02_12-3

CloudのサンプルCD。
 こうやって色とりどりの封筒に詰められて出て行く。
  巷へ。雲の港より出航していく。
   私は、行ってらっしゃいと見送る岸壁の母です。